社内やAIで作った業務ツールが直せない|引き取り・保守の判断基準
ChatGPTやClaudeなどのAI、ノーコード、Excelマクロで作った社内ツールは、作った人が離れたり不具合が出たりすると保守できなくなりがちです。中小企業が引き取り前に確認すべき5点と、保守を外部に任せる範囲、任せない方がよいケースを整理します。
「担当の人が異動したら、誰も直せなくなった」
社内やAIで作った業務ツールについて、相談で聞く悩みで最も多いのがこれだ。AIコーディングやノーコードのおかげで、現場の担当者が自分で業務ツールを作れる時代になった。これは良い変化だと思っている。ただ、作れることと、直し続けられることは別の能力で、問題は作った後に出る。
本記事では、社内で作ったツールを外部に引き取ってもらうかどうかの判断基準と、引き取り前に確認すべき点を整理する。
先に結論
- 小さな業務ツールを、社内やAIで作るのは有効な選択。やめる必要はない
- 直せる人が1人しかいないなら、その1人が不在になった日を想定して備える
- 外部に引き取ってもらう前に、資料・アカウント・環境の3点を揃えると、費用も期間も抑えられる
- 業務の中核で、頻繁に機能を足す段階なら、保守の外注より社内の体制づくりを優先する
作った後に起きやすいこと
| 状況 | 原因 | 影響 |
|---|---|---|
| 作った担当者が異動・退職した | 構成や手順が本人の頭の中にしかない | 不具合が出ても誰も直せない |
| AIサービスやAPIの仕様が変わった | 外部サービスの更新に追従していない | ある日突然、動かなくなる |
| ライブラリの更新が止まっている | 依存関係の更新を確認する人がいない | セキュリティ上の懸念が残る |
| アカウントが個人名義になっている | 作成者のメールアドレスで契約・認証している | 退職とともに利用できなくなる |
| 機能を足すたびに動作が不安定になる | 全体の構造を把握せずにAIで修正を重ねた | 修正のたびに別の箇所が壊れる |
AIに「ここを直して」と頼み続けて作ったツールは、動いてはいても、全体の設計を説明できる人がいない状態になりやすい。動いている間は問題が見えず、止まったときに一気に表面化する。
引き取り前に確認する5点
外部に保守を依頼する場合、次の5点があるかで、受入可否と初期の調査費用が大きく変わる。
- ソースコード・設定の所在:どこに保存されているか。バージョン管理されているか。担当者のPCだけにないか
- 動いている環境:どのサーバー・サービスで動いているか。誰の契約か
- 外部サービスとの接続:利用しているAPI・AIサービス・クラウドと、そのアカウント名義、利用料の支払い元
- 使い方と業務上の位置づけ:誰が、いつ、何のために使っているか。止まったときの影響範囲
- 既知の不具合と、直したい点:現在困っていることの一覧
すべて揃っている必要はない。揃っていない項目は、引き取り前の現状調査で洗い出す。ただし、3のアカウント名義が個人になっている場合は、保守の前に移管が必要で、ここは社内で先に手当てしてほしい。
外部に任せる範囲と、社内に残す範囲
| 項目 | 外部に任せやすい | 社内に残した方がよい |
|---|---|---|
| 稼働確認・エラー確認 | ○ | |
| 不具合の一次調査と軽微な修正 | ○ | |
| 依存ライブラリ・外部APIの更新対応 | ○ | |
| 業務ルールの判断・優先順位づけ | ○ | |
| 新機能の要望の取りまとめ | ○ | |
| 大きな機能追加・作り直し | 別途相談 |
保守は「今あるものを止めない」ための仕組みで、機能を増やす開発とは別に考える。月3〜5時間程度の保守作業で見られるのは、現状維持と軽微な修正までだ。新機能や大規模な改修は、保守の範囲外として別途見積もりになる。
引き取りより、先に社内で決めておくこと
保守を外注する前に、社内で次の3つを決めておくだけで、事故の確率は下がる。
- 主担当と副担当:直せる人を2人にする。難しければ、副担当が手順書を読んで復旧できる状態にする
- アカウント名義の整理:個人のメールではなく、会社の共通アドレスで契約・認証する
- 止まったときの連絡先と手順:誰に連絡し、代替手段(手作業・Excel)で何日もつか
引き取らない方がよいケース
正直に言うと、次のようなケースでは、外部への保守依頼をおすすめしない。
- ツールの数が多く、全体像を誰も把握していない:保守の前に、棚卸しと整理が必要。先に業務整理から始める方が早い
- 業務の中核で、毎週のように機能を足している:外部に依頼するたびに時間がかかる。社内に開発できる人を置くか、開発を外部に委託する方が合う
- 既存の基幹システムの本体を改修したい:ベンダーの領域なので、そのベンダーに相談するのが筋
また、ツールが小さく、直せる担当者が2人以上いて、資料もあるなら、外部に頼む必要はない。無理に保守契約を結ぶことはおすすめしない。
相談するときの進め方
- 使っているツールの名前と、何をするものかを書き出す(3〜5行で十分)
- 上の「5点」のうち、分かる範囲を確認する
- 現在困っている点、または心配している点をまとめる
- 相談する。初回30分の無料オンライン相談で、受入可否と最初の一歩を一緒に決める
保守の内容と範囲は、運用保守のページにまとめている。他社開発・社内開発のシステムは、資料やソースコードを確認したうえで受入可否を判断する。
まとめ
- 社内やAIでツールを作るのは、業務改善の有効な手段。ただし、直し続ける仕組みは別に必要
- 引き取り前に、資料・環境・アカウント名義の3点を整えると、保守の費用と期間を抑えられる
- 保守は現状維持と軽微な修正まで。機能追加は別の話
- ツールが小さく、社内に直せる人が複数いるなら、外部に頼む必要はない
基幹システムのような大きな仕組みについては、基幹システムの選び方で、内製が向かない理由と例外を整理している。AI活用全体の進め方は中小企業のAI導入ガイドを参照してほしい。
よくある質問
- Q. AIで作った社内ツールでも保守を依頼できますか?
- A. ソースコードや設定、動作環境の資料を確認したうえで、受入可否を判断します。動作しているツールでも、構成が分からない・認証情報が個人のアカウントに紐づいている場合は、先に整理が必要です。
- Q. 引き取りにはどんな資料が必要ですか?
- A. 最低限、ソースコード(または設定のエクスポート)、動いている環境の一覧、利用しているAPIやサービスのアカウント名義、使い方の説明があれば判断できます。なければ現状調査から始めます。
- Q. 内製したツールは、外部に任せず社内で持ち続けた方がよいですか?
- A. 業務の中核ではなく、直せる担当者が社内に2人以上いるなら、社内で持ち続けて問題ありません。担当が1人だけの場合は、その人が不在になったときの備えを先に決めておくのが安全です。
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